後編

五十嵐 純子(いがらし じゅんこ)
似顔絵イラストレーター・デザイナー
神奈川県茅ヶ崎市出身。
2000年、夫婦の夢でもあった北の大地で生活をスタート。
似顔絵名刺や似顔絵のファイルを制作・販売する「かでる工房」のほか、
帯広市の隠れ家民泊「おむすびハウス」を経営。
夫と3男子と5人家族。

 かでる工房

  おむすびハウス

後編

●‥‥もともと絵を描くことは好きでしたか?

子どもの頃から絵やイラストが大好きでした。
でもまさか絵を仕事にするとは思っていませんでした。

●‥‥そして まさか北海道に移住するとは?!

そうですね(笑)。

今は北海道に住むわたしたちですが、
もともとは神奈川県茅ヶ崎の出身。夫は鎌倉出身です。

何度か旅をするうちに、この北の大地が大好きになって
とうとう移住しちゃったんです。

ここ北海道十勝に来るまでは横浜に住んでいました。

●‥‥ネットで商品を届けるっていうのは、時代の先端をいってましたね!
「ネット環境があれば、住む場所は問わない」
ってみんなが気づいたのは最近のことだと思います。

2000年秋のことですから、早い方だったと思います。

もともと夫は、システムエンジニアだったので
サイトを作って 似顔絵名刺の専門店「かでる工房」の開業に至ったんです。

楽天もAmazonもまだ世の中に出たばかりの時代です。

ネット環境もまだダイヤルアップでした。

●‥‥ダイヤルアップ(ピーガガガっていう)時代にもう始めてるんですね!

ネット環境も違いましたが、仕事に対する感覚も違いました。

20年前は「1分でも早く」「レスポンスは○分以内が好ましい」っていう時代だったと思います。

ですから当時は、夜中に「ここ修正してほしい」とお電話をいただくことも ありました。
自分でも寝ぼけて作業したりして(笑) 大変だったなと思います。

また、メールの送受信に時間がかかりますから
確認のための画像サイズもできるだけ小さくするという配慮が必要でした。
受けとる側もダイヤルアップの環境だとなおさらです。
ネット環境がADSLになった時は、すごい!って思ったものです。

20年のネットの進化ってすごいですよね。

●‥‥ネット環境が変わったことで、ご自身の姿勢や絵の変化などはありましたか?

あまり変化していないと思います。

絵のタッチが変わっちゃったら、
やっぱりちょっと嫌だなというお客様が結構いらっしゃるんです。
だから、雰囲気は変えないようにしています。

例えば、以前の名刺から年数が経ったので
もう一回描き直してくださいというご依頼の時に、
「ちょっと今風にしてみようかな」と思ったり
「グレードアップしたところも見せたい!」と思ったりするのですが(笑)
「前の方が良かったよね」ということがあります。

長く使っていただくものなので
こちらの軸がぶれてしまうとご迷惑をかけてしまいますから
ぶれないようにしています。

●‥‥(名刺の)ジャンルによって描き分けることがありますか?

いろんなジャンルの方からご依頼をいただきます。

    • ギタリスト
    • バイオリン奏者
    • お医者さん
    • コンサルタントの方
    • 営業職の方など。

その方によって、キラキラした華やかな雰囲気にしたり、
あんまり強めの色は使わず、優しい感じにしたりします。

例えば、内科のお医者さんだったらキリッとした雰囲気。
歯医者さんからは、やわらかくなるようにというリクエストもあります。

●‥‥これまで印象的なお仕事はどんなものがありますか?

    • 露天風呂に入っていて、上半身裸で 後ろに富士山とか。
    • 馬に乗っているペンキやさんとか。
    • 忍者の格好しているとか。

忍者の格好をしている名刺は、
忍びの服を着て、顔の前で人差し指を重ねたポーズを描きました。
さらにその似顔絵が名刺にたくさん散らばっている(分身の術)という…
とても印象的な名刺でした(笑)

●‥‥!!!

面白いですよね。

こちらで忍者をいきなり登場させることはないのですが、
ご要望があれば 一見奇抜なものでも描いてみます。

描いてご提示すると
「イメージ通りだ!これでOK!」ということもあるし
「やっぱり別のイメージでいこう」っていうこともあるし。

納得していただくまで描いています。
一番嬉しいのは、実際に喜んで使っていただくことです。

納品するときに、お客様が納得していることが大事です。

逆に一回でいいよって言われちゃうと 本当にいいんだろうかと心配になってきます。
とことんご意見を言っていただいた方がいいです。

●‥‥描くときに一番大事にしていること、モットーは何でしょうか?

皆がほんわかする感じがいいなと思っています。

似顔絵の中には、特徴を強調するものもありますが、
それはし過ぎないようにしています。

美化するというのではないけれど、なんか可愛らしい。

そんなやわらかさが出るように心がけています。

●‥‥北海道で20年。今、どんな目標をお持ちですか?

初めて北海道に来たとき、
シャンプーやオリーブオイルが凍ったり
クリスマスのポインセチアがあまりの寒さに枯れてしまったことに驚きました。
わーすごい!と、それはそれで楽しんでいたのですが(笑)

そんな中で始めた「かでる工房」も、オープンから20年が過ぎました。

日本中、そして世界各地にたくさんのお得意さまを持つまでになりました。
その間に子どもも3人生まれ、
子育てをしながら「かでる工房」を続けられていて、
こんなに幸せなことはありません。

以前フランチャイズ化しませんか?という提案をいただいたことがあります。

とてもありがたいお話でしたけれど、
わたしは、近所の八百屋のおばちゃんみたいな名刺屋でいたいなと思っているん
です。

気軽に相談してもらって、 気軽にイラスト化できるような…….。
この名刺屋を、そんな風に感じていてほしいと思っています。

大きな夢じゃないんですけど
地に足をつけた感じをずっと続けていくことが目標です。

それを忘れずにいきたいです。

(了)

 

インタビュアー:鶴岡 慶子