• 後編

おおかわ じゅんこ

大川 淳子

東京都出身
WEB広告制作会社勤務を経て、2017年に同い年の鍼灸師と共に渡印。
インドデリーで「ありあけ堂鍼灸治療院 in India」を立ち上げる。
インドに住む日本人、また外国人を中心に「日本式の安心、安全、丁寧なWELLNESSサービス」を提供。
コロナ禍を経て現在は、デリー近郊のグルガオンで
日本人鍼灸師3名、インド人マッサージ師6名で活動中。

  www.ariake-do.com
@ariakedo.india
  @ariakedo

【2】

◼️…その後、すぐにインドに渡ったのですか? 

そんな話をしていた年末の翌年(2016年)
「初夢ツアー」39,800円でインドに行けるというので
視察を兼ねていくことにしました。

ただその時は、良い印象が全くないひどい旅でした。
私たちが行った3月は、とにかく暑かったんです。
そして泊まった安い宿は、治安もあまり良くないエリアにあって、 外に出られない状態でした。

ほとんどホテルの中にいたんです。

もうこの話はなくなると思っていたのですが、
彼女からすぐに連絡があって「次はいつ行く?」って言うんです。

次は8月に行くことにして、今度は入念な準備をしました。
日本人のガイドもつけました。

その日本人のガイドの方が、これまた同世代の女性でした。
3時間の移動時間ずっとおしゃべりして盛り上がって、
目的地についても車の中でずっとお話するほどに意気投合しました。

彼女の夫さんを通じて
インドでビジネスをしている日本人を紹介してもらうなど、
本当によくしてもらいました。 

最終的には始めてみなければ何もわからないということで、
3ヶ月間トライアルで始めてみる。
ダメなら帰ればいいじゃんという結論に達して、
私たち二人は半年ぐらいの生活資金を持って2017年にインドに渡ることにしました。

初めは出張して施術をするところからスタートしました。
徐々にお客様が増えていくと
なにしろ移動に1、2時間かかってしまって大変なので、
サロンの場所を借り、会社の登記もしました。

そこから8年になります。 

◼️…言葉の壁はありましたか? 

インドに渡るまで英語はほとんど喋れなかったです。

私は青山学院女子短期大学英語学科に進学したんですが、
大学時代は全く勉強せず遊び呆けていました(笑)

1年休学してアメリカに語学留学にもいきましたが、
書くことはできるけれど、話すことや聴くことが難しくて
かえってコンプレックスを強く持つようになっちゃいました。
逆効果だったんですね。

語学って、コミュニケーションの道具なので、
喋りたい相手がいないと喋らないんですね。 

これから先も絶対に海外で生活することないだろうし、
英語を喋る必要は一切ないと思って、
英語に対する興味を全てなくしていました。

まさか自分が海外で何かやると思っていませんでした。
その時勉強しなかったことが唯一後悔していることですね。 

◼️…どんなお客様が多いですか? 

お客様の9割は日本人の駐在員様とそのご家族、
そして現地採用の方々です。

インドは過酷な土地で、
おそらく駐在の中で嫌がられるトップ3に入るんです。
夏は50度ぐらいまで上がって、冬は2〜10度ぐらいまで下がります。
初冬は世界のガス室と呼ばれるぐらい、大気汚染で真っ白になります。
そしてコミュニケーションの難しさもあります。

病気になったら病院に行けば良いのですが、
病気じゃないけれど辛いという時に行く場所として
私たちがすぽっとハマったのでしょうね。

◼️…今もその方と一緒にやっているのですか? 

今は一緒ではありません。

彼女には元々持病があったんですね。
それが悪化してドクターストップがかかっちゃいました。
インドに渡ることも仕事をすることも止められちゃったので
2019年末に日本に帰国しました。

一人になってすぐコロナ禍に突入していくんですね。
(2000年)街はロックダウンになってお店もクローズしました。

会社をたたむ選択肢もありましたが、
私は技術者ではないので、帰国しても何も残っていません。
IT、広告業界は半年いなかったら時代から取り残されますから
戻るところはなかったんです。

スタッフもいるし、お客様もいる。
だから一人でもやっていこうと覚悟を決めました。 

スタッフ恒例のパーティ

◼️…一人でやる覚悟は相当のものですね。 

一緒に立ち上げた彼女が帰国して
一人で一体何ができるんだろうと思って不安でした。

それまでサラリーマンだったので、経営のことは分かりません。
経営に関する本をたくさん読みました。

でも誰かが成功した方法は、全て自分に当てはまるわけではありません。
誰かから教わることなんてないかもしれません。
最終的には、自分がやるかどうかだとも思います。 

とはいえ、情報は大事なので、
世界で活躍する起業家グループに入れてもらっています。
情報交換できるのはありがたいことです。

また、会計士さんや弁護士さんもいるので、
インドの法律などは、そういう仲間で情報交換しています。 

◼️…大変なことはどんなことでしたか。 

大変だったのは、文化の違いでしょうか。

驚いたことことは、
今日やろうとするタスクが3つあったとして、
1日では絶対に終わらないということでした。

むしろ増えていくばかり。

例えば警察に書類を出してハンコをもらって、
その書類をこっちに出すとすれば、
まず今日は警察に行くというタスクがあります。
ところが警察に行くと「あれが足りない」「これが足りない」と言われるんですね。
「昨日はこれで良いと言われた」と話しても、
「昨日のことは知らないよ」って言われるんです。
さらに次の日行くと「この用紙が違う」と言われたりする…。

銀行に行ってもそうです。
その間にまたタスクが増えるんですね。
最初の頃は1日に1つのタスクすら終わらないことに愕然としました。 

そのうちに、一日に一つタスクを終わらせることができたら
今日は自分を褒めたほうがいいと思えるようになりました。

まるで「やったもん負け」です(笑)

本当に困るなら相手もやるだろうから、
先回りしてこっちがやるということで
自分を忙しくするのはやめようと思いました。

サラリーマン時代は 言われる先の先まで考えて仕事をしていたのですが、
アクションを受けてから瞬発力を高めようと考えを改めました。

多分私は180度性格が変わったと思います。 

また、マネージメント関連では、
元々ものづくりの面白さやチームで創り上げる面白さを経験していて、
人を動かすのは楽しい、向いているかもしれないと思っていましたが、
雇用に関することで苦労しました。

コロナ禍で、一旦全員いなくなり、 インド人は戻ってきたけれど、
日本人は雇用し直しだったので、かなり苦労しました。
最初の頃は知り合いの鍼灸師の方に紹介していただいたりしました。

現在は、日本人の鍼灸師3人、インド人のマッサージ師6人という体制で運営しています。 

◼️…今後 どんな展開を考えていますか? 

 

インド人の健康意識を高めることも私たちの役割だろうと思います。

日本人は野菜を食べたり運動したりと健康意識が高い人が多いですが
インド人はお腹ポッコリで糖尿病や高血圧の方が多いんですね。
やはり意識が高まらないとそこにお金をかけませんよね。

インターネットで海外の情報も入ってきて
ようやく栄養管理にも目が向くようになってきていますが、
まだまだインドは健康黎明期だと思います。

ただインドはものすごいスピードで変化している国です。
14億人の健康意識が変わったらすごいことですよね。 

ヨガクラスもあります

また、会社としては新しいコンテンツを導入したいと考えています。

新しく何かをするとなると、体力も資金も必要ですが、
私自身は技術者ではなくてコンテンツを持ってないので、
まずは「探す」作業になるだろうと思います。

コンテンツそのものなのか、 ビジネスパートナーなのか、
これから探っていくことになりますが、
インドでまた 新しい仕組みを作りたいと考えています。 

インドでは珍しい虹

(了)
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