Yukari West

ウエスト ゆかり

福岡県生まれ。
高校卒業後渡米。
ワシントン州ハイラインコミュニティカレッジで学ぶ。
2000年からオハイオ州。夫、娘、息子と4人家族。

WestHoneyCompany
蜜蜂ぶん子 裏庭養蜂部in アメリカ
West Honey Company LLC

【2】

Q.蜂は怖くなかったのですか?

あんまり怖いとは思いませんでしたね。
なにしろ、子どもの頃は野生児でしたから(笑)
蜂がいても「蜂がいるなー」と通り過ぎる感じでした。

私は全く興味なくて見ていただけでしたが、
たまに夫が留守する日に「世話をしておいて」と頼まれるので、
徐々に関わるようになりました。

夫がまず勉強して、それを私に教えるという具合でした。

蜂蜜より、ミツバチ自体に興味がありました。
ミツバチが生まれて、巣を作って外に出て蜜を持ってくるという過程が面白いと思いました。

子どもの頃は、ペットに囲まれる生活をしていて、
犬は常にいましたし、猫を拾ってきちゃったり、金魚もうさぎも鶏もいました。
鶏はお祭りで買ってきたものを1人で育てていました。

幼稚園に勤務する母が
幼稚園で育てていた亀とかメダカを
夏休みには 家で預かって世話をしていました。

常に動物と触れ合う環境にあって、飼育をするのが好きだったので、
ミツバチに対しても、この子たちのお世話をしたいっていう気持ちが出てきたんです。

Q.ミツバチはなでなでする感じじゃないですよね。

できないですね、したいんですけれど(笑)

Q.ミツバチの魅力はどんなところですか。

かわいいんです。

1匹1匹が何かしてるんですよね。
それぞれ役割があって、常に仕事をしているんです。
その姿を観察するのが面白いです。

ちなみに働き蜂はみんなメスです。

生まれてすぐに仕事があります。
自分が生まれた巣房(六角形の穴)を掃除するところから始まります。
そこを綺麗にしないと、女王蜂が卵を産めないので完璧に綺麗します。

今度は、赤ちゃんの世話をする蜂になるんですね。
そして、蜂の巣を作る仕事をします。

女王蜂のお世話をするのも女の子たちです。

入り口で門番の(巣を守る)役目をしている蜂もいます。
たぬきが蜂蜜を狙ってやってきますし、
スズメバチやスカンクはミツバチを食べるので命懸けで闘います。

門番の役割を終えた蜂がやっと外へ行く外勤蜂になります。
貯蜜係は、外勤蜂が集めてきた蜂蜜を受け取って巣房に蓄えます。

働き蜂(メス)は、みんなたくましいです。

一方でオスは 女王蜂と交尾をするためにいます。
赤ちゃんの世話もしないし、巣も作らない。
蜂蜜も花粉なども集めませんし、毒針もありません。
オスのハチは、何もしないです。
子孫を残すためだけに存在します。

Q.ミツバチはどのように冬を越すのですか。

ミツバチは夏の間は大忙しですが、
冬の間は巣に入って自分で体温をあげるんです。
そして巣箱自体を温めています。

ずっと起きて、羽をパタパタさせて寒くならないようにしています。
特に女王蜂を守るために、女王蜂を囲って温めて越冬します。

Q.どんな作業をするのですか。

一つの箱に巣枠が10枚あるのですが、それを定期的に確認しに行きます。
女王蜂が卵をちゃんと産んでいるか女王蜂が病気していないかを見ます。

女王蜂が不健康で卵を産まないと、巣が存続できません。
他には、寄生虫がいないか蜜を持ってきているかも確認します。

この確認作業は大体二週間に一度ぐらいのペースです。

もしも女王蜂が不健康になったり、死んじゃったりした場合
働き蜂が新女王蜂を育てるのを待つか、買うことになります。

購入した場合、女王蜂はマッチ箱大の箱に入ってきます。
働き蜂たちは、新しい女王のフェロモンを学習して、数日かけて馴染んでいきます。
馴染む前に箱から出してしまうと、働き蜂が殺しちゃう可能性があります

慣れた頃に、働き蜂が自力で箱の栓を開けて新しい女王蜂を出してあげます。
箱の栓は固形の砂糖でできているので、働き蜂が開けられるようになっているのです。

そうやって、働き蜂が新しい女王蜂を受け入れます。
神秘ですよね。

その時オスはどうしているかというと、やっぱり何もしない。
針もないから外敵と闘うわけでもない。
それなのに、体が大きくてよく食べるので、
寒い時期になってくるとメスに追い出されてしまいます。

追い出されたオスは自力で食べることすらできないので
餓死しちゃったり、メスに殺されちゃったりします。
オスは肩身の狭い社会のようです(笑)

Q.採蜜する時、蜂は暴れませんか。

巣枠を取っている時は飛んでる時の羽音が大きいです。
採られるのがわかるのだろうなと思います。

でも蜂蜜がありすぎると、蜂たちは働かなくなります。
外に飛んでいって蜜を持ってくるのをやめてしまうので、
バランスを保てるように、私たちは余った分をいただきます。

蜂たちが越冬できるぐらいの蜂蜜を残しつつ、余った分をもらっています。

Q.採蜜したはちみつの加工品はゆかりさんのアイディアですか。

そうです。加工作業も自分でやっています。

商品の中に蜂のワックスもあるのですが、
きれいにしていく作業が一番時間がかかりますね。
蜂が時々入っているので、それを取り除く作業に気を使います。

一旦きれいにしてしまえば、後はそんなに時間はかかりません。

今後は、のど飴も作ってみようと思っています。

Q.皆さんに届けた時のお客様の反応はどうですか。

喜んでもらっています。

やはり、オーガニックで、100%自然の恵みを生かした商品ということもあって、
安心して使えるという点で喜んでもらっています。

初めは、試供品を近所の人に使ってもらって、
反応を聞きながら試行錯誤し、改善してきて
これで完璧かなと思えた時点で、お店を始めました。

お友だちにも助けてもらいながら、現在はネットでも販売しています。
ドイツとカナダ、香港に送ったことがあります。

Q.ご主人のレストランとご自身の養蜂とこれからどんな展開にしていくでしょうか。

夫のレストランは、ドライブスルーのホットドック屋さんです。
ホットドックはパッと食べられるし安いし、気軽にきて欲しいなと思います。
まだ始まったばかりですが、チェーン店やフランチャイズ店を増やしていきたいと話しています。

ホットドッグにかけるチリソースが
亡くなった義母(夫のお母さん)のレシピなんですね。
秘伝のチリソースの味が多くの人に愛されて広がっていったら嬉しいです。

夢が広がります。

コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、
家業の方でも いろんな動きがありました。
夫の趣味をちゃんと手伝ってみようというところから
ミツバチに目覚める機会ができて良かったと思っています。

趣味で始めて、趣味のままにするのか。
いや、もっと大きくするか….

そう考えると、やはり大きくなっていけばいいな、と。
そちらを選びたいと思います。

はちみつの生産量もですが、養蜂家を増やしたいです。

養蜂家が老齢化し、年々その数が減ってきているので、
養蜂の面白さを若い世代にも広げたいです。

今年、二人の方に養蜂の魅力を教えたんですね。
それがとっても嬉しかったです。

教えるのが楽しいし、仲間が増えるのがとっても嬉しいです。
今はまだ若い人も少ないし、女性も少ないのが残念でなりません。

もっともっと広めていきたいです。

(了)
インタビュアー:鶴岡 慶子
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