秋田県大館市生まれ。
短大卒業後曲げわっぱ工房に就職し、2016年1月伝統工芸士の認定を受ける。
2022年独立し、曲げわっぱ工房E08を立ち上げ現在に至る。
【2】
◼️…曲げわっぱができるまでどんな工程があるのでしょうか?
大きく分けて10工程くらいあります。
製材からスタートして、
鉋(かんな)かけ → 部材取り → 剥ぎ取り → 曲げ
→ 乾燥 →
糊付け → 底入れ → 仕上げ
→ 樺閉じ(かばとじ)といった感じです。
よく1日で何個できるのかと質問されますが
工程によっては休ませる期間もあるので、
製品の完成まで 2ヶ月以上お待ちいただいています。
例えば乾燥する工程では、
湿度50%以下で1週間乾燥させるようにしているので、
これだけでも1週間ですからね。
◼️…どの工程が一番大変ですか?
一般には、剥ぎ取りが一番難しいとされています。
木の板の両サイドを削って、合わせた時に綺麗な形になるようにする。
髪の毛1本の薄さで削り出すので、繊細な部分ですね。
私が苦労したのは、糊付けの作業です。
1個やるのに1時間かかりました。
木鋏(きばさみ)という昔ながらの道具を使うのですが、
知識もないし、全く使い方を知らない。
実際使ってみても、できない。
こんなにも難しいのか!と驚いたし、
どうやったらうまく合わせられるのか
ちゃんと教えてほしいと思いました。
教えられたって、うまくできないのに、
見て覚えろ、やれ、ですからね(笑)。
◼️…どんなきっかけで独立することになったのでしょうか?
定年間近や定年退職後に独立する男性はいましたが、
この年代で、しかも女性で独立したのは私が業界初でした。
この業界に入った時から
曲げわっぱでアクセサリーを作りたいと、ずっと言ってきたのですが、
作るのは、会社員でいる限りどうやら難しそうだとも思いました。
前の会社でおよそ20年勤務しましたが、
お客様と接する機会も与えられて、お客様の声を聞いていく内に、
曲げわっぱの新しい形をやってみたいと強く思うようになりました。
アクセサリーもそうですし、
今までなかったものを作って提供したいと思ったんですね。
同時に、若手が育つ環境づくりをしたいという思いもありました。
独立することは、
とても勇気のいることでしたが、夫も背中を押してくれました。
いろんな人の思いを汲み取った時に、
多くの方にとって(曲げわっぱの)新たな入口になれるんじゃないかと思って
2022年独立しました。
◼️…曲げわっぱ工房「E08」は何と読むのですか?
「E08」=いーわっぱと読みます。
E=良いでもあるし、私の名前(ERI)のEでもあります。
アルファベットなら世界中で使えますし
「8」は「八」で末広がりで縁起のいい数字なので、
この名前にしました。
◼️…曲げわっぱの新しい形とは、どんなものですか?
オーダーメイドに特化しているのは新しいと思います。
まだオープン前でしたが、新聞に掲載された途端に
「こういうものを作って欲しい」という方からお問合せがありました。
女性の方でご飯茶碗一杯分の小さな曲げわっぱを作って欲しいとのことでした。
工場はできているけれど
オープンするための作品づくりをする段階でのことだったので驚きました。
待っている人がいたんだなと思います。
女子目線の可愛らしい商品づくりに手応えを感じました。
また、秋田市のかき氷専門店*の方からの依頼で
そのお店だけの特別な形を相談しながら作りました。
*秋田市 ハチコオリ @hachikori8
アクセサリーを作る夢も叶いました。
小さくても作業工程は同じです。
壊れやすいですし、決して効率は良くないのですが、
ちっちゃくて可愛いものもたくさん作りたいと思います。
さらに、異業種とのコラボレーションにも取り組んでいます。
最初にやったのがドライフラワーとのコラボレーションです。
由利本荘市の女性のドライフラワー作家さん*、
大館の花屋さん*と三人で組んで商標登録を取って企画をしました。
*由利本利本荘 memomi @memomi20222
*大館市 アバ・フローリスト
@aba_florist
クリエイターの方々とのコラボレーションもしています。
クリエイターそれぞれの良さが組み合わさった作品はとても新しいと思います。
◼️…この後はどんな展開を考えていますか?
伝統工芸も大事にしつつ、新たな世界をもっと目指していきたいです。
会社員の時にはできなかったことにどんどん挑戦していきたい。
新しい形の企画をしていくのはとても楽しいです。
そしてやはりお客様の作って欲しいという要望に寄り添える職人でありたいと思います。
曲げわっぱ業界の将来のことを考えていくと
若い人たちにつなげていきゃなきゃいけないって思うんですね。
アクセサリーは、若い子たちが興味を持ってくれます。
まずは手に取ってもらって良さを感じてもらいたいです。
そこから弁当箱やおひつ、ワインクーラーなど
大きいものにつながっていったら、
とても良いですよね。
うちの工房のスタッフが今年、伝統工芸士の試験を受けました。
後輩が育っていくのもすごく嬉しいことです。
自分が頼れる伝統工芸士であること、
いつでも前に進む職人であること、
そして、若い人たちを育てていきたいですね。
ものづくりが好きな人が、
やりたい気持ちを持続させて頑張って欲しいので
好きな気持ちのまま育っていけるような環境づくりも合わせてしていきたいです。
(了)
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