まつい ののこ

柗井のの子

花火師
長野県出身。
多摩美術大学 生産デザイン学科 テキスタイルデザイン専攻 卒業後、作家活動を経て現職。

趣味は旅をすること。

   伊那火工堀内煙火店 公式サイト

【2】

●…最初に自分が仕込んだ花火玉が打ち上がった時はどんな気持ちになりましたか

なんか、泣けました。

いまでも思い出します。
会社近くのスキー場で上げてもらったのですが、
大きく見えるなと思ったのを覚えています。

他にも
花火に芯を初めて入れたタイミングとか
競技上で魅せるために仕込んだ玉とか
いろいろな初めてがあって、どれも忘れられないです。

幸せだなって いつもいつも思います。

●…作家時代と今、創るということでは似ていますか?

随分違う感覚があります。

作家時代は、自分の名前で作品を創る、
今は会社の名前で創らせてもらっています。

花火玉を仕込んで、打つときは使ってもらっているという感覚です。

自分一人のものじゃないんです。
会社の人みんなで一つのものをつくっています。

なので、もっと責任が大きくなっている気がします。

花火の仕事って一人じゃ絶対にできない。
大勢の人が関わった中で上がるものです。

見せられる花火玉を作って、
それを選んで使ってもらえることは、とても贅沢なことです。

今までやってきたことと全然違いますね。

●…一人の制作活動ではなく、チームで作っていく時に、大事なことはなんでしょうか?

とにかく丁寧に仕事をすることです。

今やっている目の前のことが
全体を作っているんだっていう感覚を 持ちながらやることだと思います。

自分の中でできる最高の状態を、
みんなそれぞれが持ってこないといい花火玉はできないし、
いい仕事はできないだろうという気がします。

●…火薬を扱うということでは、気を使うことも多いですね。

美しいものだけれど
一方で、武器にもなってしまう火薬を扱うので、
精神的にも、技術的にも大事に丁寧に事を進めていきたいです。

自分自身もですが、一緒に働いている人も、
お客さんも傷つけてしまうかもしれない、
大きな力を持ったものを扱っている。

そう常に思いながら、安心できる形のものを作っていきたいです。

例えば、その黒い粉(火薬)を触っているとき以外でも
ゴミを拾うとか、筒を洗うとか一見関係なさそうなところでも
きっと繋がっているので全ての仕事に対して、
きちんと向き合わなくてはいけないと思っています。

●…そして作品は、花火が開いてみるまでわからないですよね、怖い気もします。

現場当日は、緊張しますね

あんなに大勢のお客さんが待っていて
安全に無事に打ちあがりますようにと思いながら、
いつも 終わるまで心臓がバクバクしています。

無事にきれいに打ち終わって
お客さんの「わーっ」という声や拍手で、やっとホッとできます。

花火って心をぎゅーっと動かす、すごい力があると思うんです。

花火って本当にすごいですって全力で言いたいです。

●…このほど、初めてプログラムも組んだんですね?

難しかったです。
今まで先輩たちがやっているのを見ていたのに
何も見ていなかったなと思い知らされました。

例えば、花火玉が打ち上がったときに、花火が半分重なってたら、どうでしょう?

2ヶ所で打ち上がるなら、2つの花火が 2つともちゃんと見える方がいいし、
3ヶ所から打ち上がっていたら、3つちゃんと見えている方がいい。
そのほうが、花火玉たちが「生きてる」気がするんです。

逆に離れすぎていても、
あの子とあの子は別の空間にいるのかなって感じだし…。

プログラムを組むときのその距離感っていうのは、
これから経験を積んで分かっていくことかなと思います。

●…今後、作家時代の経験がどんどん生かされていく気がします。

そうだと良いですが…どうでしょうか(笑)

作家をしていた時もぼーっと生きていたわけじゃなく、
色々な人と関わりながら、
いろんなことを考えながら生きていたと思います。

それがあって、今の自分があると思っているので
その時代の自分が、この先の自分の力になったら嬉しいですよね。

●…今後の夢はどんなことでしょうか?

あまり遠くのことは考えてないです。
今の目の前にあることを全力でやっていこうと思います。

あの日「花火屋の人生はどうだろう?」と思って飛び込んでみた。
そこから始まって、今、花火屋になって、
この人生を選んで生きている中で
知りたいことも、掘っていきたいことも、まだまだたくさんあります。

これからも 花火屋として、誇れる仕事をしていきたいと思っています。


第17回 能代の花火(2019夏)の映像です
オープニング花火・フィナーレ花火
松井のの子さんは、伊那火工堀内煙火店 本部担当です。

(了)
Copyrighted Article. Do not reproduce without permission.