たかはし すみか

高橋 澄香

3歳から始めたバレエにおける身体のメンテナンスのため
アロマテラピーとマッサージを学ぶ。
2008年自宅サロンを開設。
子育てを卒業したタイミングでホテルスパ勤務に移行。
現在は外資系ホテル「フォーシーズンズホテル」に勤務し、
さまざまな国のゲストへの施術を行い高い評価を得ている。

・hotel spa therapist (ホテルスパセラピスト)
・rusie dutton yoga instructor(ルーシーダットン ヨガ インストラクター)

フォーシーズンズホテル

【1】

◆…現在は外資系ホテルスパに勤務なさっていますが、ゲストの反応はいかがですか?

多くのゲストが喜びの声(コメント)を残してくれます。
これを読むと疲れが吹き飛びます。

◆…ホテルスパはどういうものですか?

トリートメントに付随して温浴施設、サウナ、プールなども一体になっていて
ゆっくり過ごしてもらう場所を総称してホテルスパと言います。
ラグジュアリーホテルとされるところには基本的にあります。
贅沢な空間で、私はそこでトリートメントを提供してます。

宿泊する方も もちろんトリートメントを受けますが、
数時間を過ごして気分転換をして帰る”デイスパ”という形を取る方もいます。

女性だけじゃなくて 男性もすごく多いです。
短い60分コース~あるのですが、多くの方は90分~120分を選びます。

◆…ずっと手を動かすお仕事ですよね?

体力勝負の仕事です。
ずっと手を動かしていますし、もちろん立ちっぱなしです。

現在は外資系ホテルスパに勤務しているので、ゲストの7割が外国人ですね。
体の大きな方もたくさんいます。
手の平だけじゃなく、腕も使うし、自分の体重も使います。

体力はものすごく消耗しますね。

◆…そもそも、この道に進むきっかけはどんなことだったのでしょうか?

バレエで疲れた身体をメンテナンスしたかったというのが始まりです。

私は幼い頃身体が弱かったのでお医者様のすすめで 3歳からバレエを習い始めました。
お稽古は厳しかったけれど、バレエの魅力に取り憑かれました。

どれぐらい夢中だったかというと、熱があってもレッスンに行くぐらい(笑)。
小学生の時、風邪で学校を休んだことがあって、
でもバレエのお稽古に行きたくて行きたくて親の目を盗んで家を飛び出して、
スタジオで熱で頭がボーっとしながらもレッスンしたんです。
母は呆れ顔でスタジオに迎えに来てくれました(笑)。

ご縁があって大学卒業後すぐに結婚して、
女の子を出産し娘にもバレエを習わせました。

自分や娘の身体のメンテナンスをしようと思って
気軽に習い始めたマッサージでした。

まさかその時は仕事になると思ってなかったけれど、
学べば学ぶほど人間の身体に触る事は奥が深いし、楽しい!
天職に出会ってしまった!と思いました。

◆…どんな勉強をするのでしょうか?

もちろん身体の骨格や筋肉について正確に知ってないと
トリートメントができないですから徹底的に学びます。

そのほか、リラックスの仕方という面では、
心理学的なこと、マナーや香り、アロマテラピー…。
どうすればゲストにリラックスしてもらえるかを総合的に勉強しました。

◆…バレエが導いてくれた道ですね。

バレエは、私の”代名詞”、”アイデンティティ”ですね。

大学時代は、体育館のトレーニングスタジオの片隅に鏡とバーがあって、
バレエの自習をさせてもらう事ができました。

本当は個人向けには貸し出し禁止ですが、
管理の先生のご厚意でバーを借りることができたんです。
サッカー部やラグビー部が筋トレする同じフロアで対峙して、
今ではありがたい、良い思い出の一つです。

勉強も大変で必死に課題をこなし、何とか単位をもらいましたけれど、
往復2時間かけてバレエのレッスンにも通いました。
若いとはいえカオスでしたね。

身体を鍛えるのはもちろんですが、
立ち振る舞いや挨拶の仕方など礼儀作法もバレエから学びました。

師匠から教えてもらった“秘すれば花”という世阿弥の言葉は座右の銘です。

◆…子育てとの両立も大変だったのではないでしょうか?

子どもが小さい頃は勤務時間が合わなかったので、
サロンに就職するのは先送りにして、自宅サロンを2008年に開きました。

娘もバレエをしていたから、しばらくの間”ステージママ”でした。
その後彼女は突然チアリーディングに転向したので、
私も必然的に体育会の”アスリートママ”に転向することになりました。

朝4時起きでお弁当を作り、5時過ぎに車で送る毎日…。
すごく大変だったけれど、娘と濃い時間を過ごせたので、子育てに悔いはありませんね。

子育てを卒業したタイミングで、ホテルスパに就職しました。
地元のホテルで2年間勤務して、楽しかったけれど、大きな試練が待っていました。

2018年末に病気がわかって、そこから2年間ほとんどベッドの上にいることになるんです。

◆…大変な病気だったのですね。

最初はお腹に激痛が走って、救急車で病院に入りました。
17日間の絶食を経験し、癌だと告知をうけました。
内臓の癌と乳癌、告知の瞬間は自分の事だと理解出来ないくらいショックでした。

そして更に肝臓癌の転移を告げられ、
4回の手術と抗がん剤とホルモン治療、放射線治療。
2年間ほとんどベッドの上にいました。

でも、ドクターが素晴らしい方々で、寛解することが出来ました。

治療が終わった時、世の中はコロナのパンデミックが起きていました。
そんな中フォーシーズンズホテルの同僚から
仕事にカムバックすることができるか?と 電話をもらったんです。
もう願っても無い事だったので二つ返事で私は社会復帰しました。

コロナの影響でホテル業界はかなり厳しかったけれど、
2022年後半からかなり持ち直しています。
海外からのゲストも増えました。