たかはし すみか

高橋澄香

3歳から始めたバレエにおける身体のメンテナンスのため
アロマテラピーとマッサージを学ぶ。
2008年自宅サロンを開設。
子育てを卒業したタイミングでホテルスパ勤務に移行。
現在は外資系ホテル「フォーシーズンズホテル」に勤務し、
さまざまな国のゲストへの施術を行い高い評価を得ている。

・hotel spa therapist (ホテルスパセラピスト)
・rusie dutton yoga instructor(ルーシーダットン ヨガ インストラクター)

フォーシーズンズホテル

【2】

◆…復帰が決まった時、どんな気持ちでしたか?

自分の居場所ができることだから本当に嬉しかったです。

治療中は世間から取り残されている気持ちになることもありましたが、
いつか復帰したい、と切望していました。

1週間ベッドに寝ているだけで足腰が弱るものです。
当然私もフラフラになっていました。

復帰することが決まったのは
コロナの真っ只中だったので、相当気を使いましたが、
それでもいい、どうしてもやりたいという気持ちでした。

もちろん細心の注意を払ってお仕事をしています。

◆…体力を回復させるのも大変だったのではないでしょうか。

もちろん簡単なことではなかったです。
自分の身体を立て直す為に散歩からスタートし、ヨガで体力を回復させました。

今日もまた(ゲストに)喜んでもらおうと思ったら、
自分の体調を良い状態にしておくことがとても大事です。
よく食べてよく眠る…。

多くの女性は我慢強いから、ちょっと頭痛があっても、お腹が痛くても頑張っちゃう。
でも自分が健康じゃないと何もできないんですよね。

仕事は全力投球だけど、
また違う日は少し省エネモードで生活するということも大切だなと思うんです。

バレエもそうですけれど、
この仕事は自分の状態が全て表現として出るんですよね。

大きな病気を経験して、意識が大きく変わりました。
目の前の世界を大切に出来るようになりました。
(性格が変わったのではないけれど)気持ちが穏やかになりました。

後遺症は今も少し残っていますが、命に別状は無いので気になりません。
自分の身体や周囲の人をより愛せるようになりました。

◆…ホテル勤務は立ちっぱなしで身体に堪えることはありませんか?

もう当たり前になっていますね。

ホテルって椅子が無いんです。
従業員食堂にあるだけです。

ホテルってフロントもみんな立っているでしょう。
1日8~9時間ずっと立ってるんです。

もちろん病み上がりで復帰した時は
職場の判断と優しさでハイチェアを用意してくれて、
つらかったら座っていいよって言われて甘えていたこともあるけど、
体力が戻ったから今は座りません。

365日24時間機能する場所であることも、ホテルの特殊な部分といえるかもしれません。
宿泊の他にもレストランやスパがあり、
裏方を支えるスタッフは皆さんが想像するより多いと思います。
また私が勤務するホテルは外資系なので、スタッフは多国籍です。

◆…語学力も必要ですね。

ゲストは色んな国からいらっしゃるし、スタッフも多国籍だから英語は必須です。

地元の高校で少しだけ英語の成績が良かったので、英語を学ぶ大学に進学しました。

ただ、進学したとたん、劣等生になりました。
なぜなら周りは帰国子女だらけだったから。

それでも若い頃に英語を勉強しておいてよかった!と思います。
かなり錆び付いていたけれど、使えます(笑)

◆…ラグジュアリーホテルスパの魅力は何でしょうか?

ゲストにとっては、トリートメントはもちろん
きめ細かいサービスが受けられるところだと思います。
本当に贅沢な空間とサービスです。
完璧なサービスで満足が得られるので、一度満足するとリピートする方は多いです。

働く私たちにとっては、
沢山の専門家が集まるので、視野が広がるところでしょうか。
働いていて楽しいです。

そして、対ゲストということでは、
最上の技術とサービスを提供するのが使命です。
初対面のお客さんでもすぐに信頼関係を結ぶことが必至です。

できるだけオープンハートで
”あなたをお迎えします”
”ようこそお越しくださいました”という空気で
心を開いて緩やかにお迎えしています。

ゆったりした方なのか、テキパキした方なのか。
ゲストの呼吸を合わせるようにしています。

マッサージで
1秒間 5センチのスピードと、
20センチのスピードでは伝わり方がまったく違います。
ゲストは、疲れをほぐしたい時もあるし、気分転換でリフレッシュしたい時もある。
エネルギーを上げたいのかもしれません。

その呼吸を聞くことに集中します。

駆け出しの頃は緊張と経験不足で沢山失敗して、ゲストに叱られた事もあります。
下手じゃないけどイマイチって。
情けなかったけれど、スタッフとゲストにここまで育ててもらいました。

今は老若男女、どんな要望にも応えようと自信を持って挑んでます。

◆…今後 挑戦していきたいことはどんなことですか?

おばあちゃんになっても、ずっと続けたいです。
「志村けんの(マッサージコント)ひとみばあさん」みたいになりたいですね(笑)

いろいろなことが機械化、AI化されているけれど、
やっぱり人の手って代わりがきかない最大の武器だと思うんです。
生身の手を生身の身体に当てるっていう素晴らしい仕事だと感じています。

私自身が病気を経験したから、人一倍、健康とかウェルネスに興味があるんですね。

コロナでロックダウンしている時期に
ルーシーダットンというヨガのライセンスを取りました。

今はスパセラピストとしてトリートメント施術をしていますが、
ウェルビーイングを広めていきたいです。

6月にはグローバルウェルネスデイ(GWD)があります。
忙しい日々だけど 1日立ち止まって健康と自分自身を大事にしましょうというグローバルな記念日です。

それに合わせて2021年はうちのホテルで ストレッチをやってる動画をアップしたんです。
最初は手探りで動画をとったのですが、
少しずつ実を結んできて声を掛けてもらえるようになってきました。

そして去年はホテルのイベントとしてヨガセッションができました。

今年で3回目ですから、もう少し深い段階に行きたいですね。
たとえば他の専門の方と一緒にセッションできたらいいなと考えています。
加速度的に色んなことが進化している感じが楽しいです。

単にヨガだけでなく、
単に元気な人の為だけでなく、
自分を大切にするライフスタイルを提供していきたいです。

健康的なライフスタイルは人間の最も基本的な事です。
私自身の生き方を反映させたウェルネスを目指します。

(了)
インタビュアー:鶴岡 慶子
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