東京都町田市出身。
高校時代にはアメリカ、大学時代には中国へ留学。
2023年2月、大学在学中にキャンピングカーデザイン事務所を立ち上げ現在に至る。
【2】
◼️…バンライフをどのように追求したのでしょうか?
キャンピングカーを自分で作るのが
バンライフと言われるライフスタイルの醍醐味なのですが、
車のちっちゃい空間の中で、
何をどこに配置して、どう機能的にしようか考えたり、
可愛くて心がときめく雰囲気にしたいから、どうしようと追求していくんです。
作るのに、かなり時間をかけたのですが
その中で自分は、空間デザインが好きなんだと気づいたんです。
振り返ってみれば、子どもの時からよく部屋の模様替えをしていたことを思い出しました。
実際にキャンピングカーが完成して、日本のいろんなところに旅に出かけて、
カメラを持ちながらバンライフをしてる人たちにインタビューをしました。
いろんな方がいろんなお話をしてくれましたが、
共通してたのは、皆さんがとても幸せそうだったということでした。
人間なので、それぞれ悩みや問題を抱えつつも、
皆さん、1日1日を生きるのが上手で、幸福の感度が高くて、
とても豊かな暮らしをされてたんですよね。
ある時出会った男性が、バンライフを始める前は自分は廃人状態だったと話していました。
でも、この箱(車)にはタイヤが付いている。
家にいる時は人生が止まったままだけど、
車にいる時は人生が進んでいるような気がするんだよね と言っていたんです。
それを聞いた時にこれがバンライフの全てだと感じました。
バンライフってただの旅の手段だったり、
車中泊もサブカルチャーのイメージを多くの人が持っているでしょうけれど、
一人の人間がここまで(バンライフによって)良い方向に人生を変えられているのを見て、
新しい暮らし方として大きな可能性があるんじゃないかと思いました。
そうだとすれば、もっと世の中の人に伝えたい。
自分のキャリア形成を考えるタイミングと、
自分が好きだった空間デザインと、
このバンライフの未来の可能性を掛け合わせたら、
キャンピングカーデザイン事務所っていう形が出来上がって起業に至りました。
◼️…キャンピングカーを作るとはどういうことなのでしょうか?
まず車を買って、中のイスを(カバーや付いているパネルも)全部取り外します。
そこに断熱材や制振材、さらにその上に木を貼っていきます。
家とおんなじ作り方ですね。
そこで電気が必要なので配信したり、バッテリーも設置して
ソファーやベッド、キッチンを組み立てて立ち上げていって、
最後に素材を貼り付けて完成です。
アウトドアの文化に捉えられがちなんですけど、
基本的には車の中での空間の話だから、
意外とインドア派の人に受けていますね。
◼️…どんな大きさがありますか?
車はどんなサイズでもいいです。
軽自動車からバスサイズまであります。
◼️…バスサイズもキャンピングカーと呼ぶのですか?
キャンピングカーは構造上の呼び方なんですね。
陸運局でキャンピングカー登録するには、
サイズや素材について要件が厳しいのですが、
それをクリアしたものはキャンピングカーとして登録されて、
車検の時にもそのまま通すことができます。
昨年(2023年)法律が緩和されて、
それまでは車内の高さが 160cm なければいけなかったのですが、
今は軽バンでも登録できるようになりました。
◼️…キャンピングカーは身近になってきた、身近になっていくんですね。
そうですね。
身近になってきていると思います。
業界では自動運転が普及される時代を見据えて、
多くの企業が(その時代にむけて)動いています。
自動運転の時代になったら運転席もいらないので、
免許もいらなくなって、
動く家がその辺に勝手に走ってるようになると言われていますね。
◼️…(驚)。そうなっていく未来をどう感じてますか?
可能性しかないと思っています。
もちろん動く家としてもそうですが、
一つの空間と捉えると、何でもできる箱なんですよね。
それを人間が動かさなくてよくて
機械が勝手にやってくれる未来は
きっと他のことも一気に発展してる時代なので
だからこそ、自分の豊かさを追求していける時代になっていると思います。
そんな時に「動く箱」があったら、
いろんな可能性、いろんな楽しみ方があると思います。
◼️…「旅」というキーワードを捉えると、キャビンアテンダントとも繋がりますね。
実は、大学である教授に「あなたはキャビンアテンダントやめた方がいい」と言われました。
私はそのために頑張ってきたのにと、とてもショックだったのですが、
今考えれば教授の言った意味がわかります。
もちろんキャビンアテンダントもすごく素敵な職業ですし、
今でも皆さんを見るたびにやっぱり素敵だなと思うのですが、
教授は、もっとあなたの得意なことを発揮できる場所があるよ、
もっとクリエーティビティーを発揮できる場所があるよと言ってくれていたと思います。
私が憧れたのは、旅をしながら仕事ができることだったので、
上海への留学の延長でバンライフに振り切ってみた結果、
今私は、旅をしながら仕事ができちゃってるんですよね。
◼️…実際に「旅」を仕事にしてみていががですか?
キャンピングカーってたくさん売られてたのですが、
女性に向けた可愛いキャンピングカーがなかったんです。
これだけいい暮らし、ライフスタイルなのに、
かわいいキャンピングカー、ときめくキャンピングカーがなかったら、
女性がバンライフに興味すら持たないだろうと思いました。
女性向けと言っても、業界が男性が多いので、男性が作ったものが多くて
色使いがショッキング系だったり、
ちょっと機械っぽい(笑)、メカメカしい感じだったんですね。
なので、そこをチャンスと捉えて、
完全に女性向きに振り切ったキャンピングカーデザイン事務所にしました。
そもそもデザインに特化したキャンピングカーデザイン事務所は、
日本で初めてのビジネスだったので、相当なブルーオーシャンでした。
同じ業界の先輩に 本当に需要あるのか?それ本当にお金になるの?って言われたのですが、
需要は自分で作りますって言い放って起業したんです(笑)
だから一番の困難は需要を自分で作っていかなきゃいけなかったことでした。
大学の専門も中国語だったのでデザインの経験もありませんから
大学に行きながらデザインスクールにも通って、
空間デザインをゼロから学びました。
幸いにも導いてくださる方は何人かいたのですが、
アドバイスの内容はみんなそれぞれ違うんですね。
そうか、正解はないんだと思って、
最終的には自分の直感と感性に頼るしかないと感じました。
◼️…需要の掘り起こし、潜在的欲求の掘り起こしはどんな形でやってきたのでしょうか?
地道にインスタグラム(SNS)で発信をして、文化づくりから始めました。
モビリティの業界は、やはり男性が多いんですよね。
車に関することは、やはり男性の方が好きなので、
ほとんどが男性のフォロワー(ファン)さんだったこともあって、
情報を女性に向けたものに振り切るのは勇気のいることでした。
でも、誰にメッセージ届けたかったんだっけ?という軸に立ち返って
これまでのフォロワーを失っても届けたい方に届けようって思ったんですね。
結構時間はかかりましたが、
現在のSNSフォロワーの男女比率は半々ぐらいになっています。
バンライフについては既にいろんなSNSで発信されてたんですけど、
もっとキラキラした、ときめくような投稿がないと、
女性に広がっていかないと思ったので、
オシャレなシーンだけ切り取って発信していくようにしました。
実際に興味を持ったら、皆さん勝手に調べるし、
他の情報はたくさんあるので、
私は、アウトドア要素はあまり入れず、
誰でも入っていけるような文化づくりをしてきました。
私だけの影響ではありませんが、
ここ最近は、女性でバンライフをしている人がとっても増えたんですね。
お客さまの層も最初は20代~30代のお客さんがメインだったんですが、
自分の(デザインの)スキルも上がってきているのと同時に、
年齢層も、60代の方にまで幅が広がってきました。
人生の大先輩たちが、自分の理想のキャンピングカーを求めて、
人生の一つの選択肢として大きな決断をして来てくださっていると思うと、
私が伝えたいバンライフの本質が届いている気がします。
「夢を叶えるキャンピングカーデザイン」がキャッチコピーです。
(お客さまへの)ヒアリングにかなりの時間を使います。
・これからの人生どんなふうに生きたいか?
・もしこれとこれとこの条件が外れたら本当はどうしたいのか?
・理想のバンライフとは何か をじっくりお話を聞いていきます。
皆さんそれぞれ形は違いますが、
その夢が実際に実現されている時の導線ってこうだよね、
じゃあ車の中ではこういう体の動きが必要だよねという確認をしながら
色を決めたり、中の家具を作ったり。
皆さんが叶えたい夢から逆算して、叶うためのデザインを作っている感じです。
◼️…今後、どんな展開にしていきたいですか?
2024年 11月17日(日)イオンモール与野 屋上駐車場で
映画『THE ROAD TO ME』のドライブインシアターを開催します。
この映画はバンライフがテーマの日本初のドキュメンタリーで、
私を1年半をかけて密着撮影したもらったものです。
『THE ROAD TO ME』はこの後、
国内外の映画祭に順次応募を開始し、約30の映画祭に申請する予定です。
国際映画祭に参加することで、世界中の観客に日本の独特なキャンピングカー文化を広めることを目指しています。
クラウドファンディング*(11/16まで)による皆さんの支援が、
より多くの人々にこの感動とインスピレーションを届ける助けとなります。
皆さんのご参加と応援を頂けると嬉しいです。
私自身が素直に楽しんでキャンピングカー文化を広めることで、
間接的な形であったとしても、それを見てくれている人たちが
良いインスピレーションで受け取ってくれたり、深い愛で繋がったりできると思います。
自分が満たされて、溢れた分を次に渡していく、
その循環を作れる人になるには、
ワクワクすることにいかに純度高くやれるかだと思うんです。
それが巡り巡って、多くの人の夢の実現の後押しになる形になったらいいと考えています。
また、私自身のキャリアとしては、モビリティの専門性を高めていくために
自動運転がもたらすバンライフへの影響について
アカデミックに研究しようと思っていて研究員になることも検討中です。
モビリティの新しい形に関しては弊社に聞いてくださいと言えるスタンスになりたいですね。
(了)
Copyrighted Article. Do not reproduce without permission.