あべ こうこ

阿部 孝子

秋田県由利本荘市出身。
文化女子大学(現:文化学園大学)家政学部 服装学科卒業。
「お洋服のリメイク KoKo」代表。

秋田市東通7丁目2-1 ノーブル東通1F
営業時間:10:00ー18:00(日曜日定休)
電  話: 018-836-6388

【2】

◆…独立したのは平成14年5月ですね。

今年21年目ですね。

本当に裸一貫からやったんです。
以前いたお店からお客様を連れてくることは一切しなかった….。

お客様ゼロの状態からスタートしました。

◆…まずやったことはどんなことですか?

家族でチラシを作りました。
まずは知ってもらいたい一心でした。
それを見て来てくれたかどうかはわかりませんが、徐々にお客様が増えていきました。

紳士服のお店やスポーツ店、洋品店などからの依頼もありました。
口コミでお客様がつながっていくのはとても嬉しく感じました。
最初からのお客様は20年のおつきあいになりますし、
お客様に助けられてここまできました。

洋服をオーダーで作っていた時代の方は
お直しに一生懸命通ってきてくださったのですが、
最近はその方々が 卒業していって 寂しいなと思っています。

でも世代交代が起きて
その子どもさんが来てくださっていますね。
たとえば遺品を持ってきて、
スーツやコートをちょっと直して着たいというご希望もあります。

◆…お勤めしていた頃と違うのはどういうところですか?

お勤めしていた頃は、自分が考えるという感じではなかったので、
お仕事の内容はまったく違うと思います。

若い頃に着たものが(サイズが小さすぎて)今は入らないという場合
布を足さないとサイズは大きくなりません。
同じ布はないわけですから、その場合はデザインをちょっと変えます。
最初からそういうデザインだったんだよっていう感じで仕上げます。

この人にはこういうデザインが合いそう、材料は何を使おうかと考えていきます。
ボタンひとつにしてもすごく迷うんです。
カフスの幅を1ミリ広くしたほうがいいかな…とか。
そういう提案もしていきます。

だから、私のお直しはすごく時間がかかっちゃいます。
お勤めをしていた頃は”考えて創り出す”ことはしていませんでした。

今ご依頼いただいているもので、白のタンクトップがあります。
二の腕が気になるというお客様で、脇の下が窮屈だともおっしゃっていたので、
袖をつけようと思ったんですね。
(今持っている素材を)頭の中で探しながら、
真夏に着るものだし”透け感”のある素材を使おうと思っています。

今年は”透け感”のある素材が流行りそうですしね(笑)
ふわっとした袖で素敵になると思います。

そう考えていると、楽しいんです。

◆…だから(洋服の)リフォームじゃなくリメイクなんですね。

そうですね、だから時間がかかっちゃうんですね。

クリエイティブなことが好きというよりは、とことんやってしまう性格なんだと思います。

お客様によっては、(丈が)長めが好きな方、短めが好きな方、いろいろいらっしゃいます。
こちらだけが主張しても良くないので、お客様のお話をよく聞くことを心がけています。

新しいデザインに変更する時に、
製図の仕方がわからなければ、絶対に作れませんから、
細かく採寸していって、寸法を合わせます。

それも大学で学んだことがいきています。

◆…他にこだわっている点はありますか。

”すくい”というミシンがあるのですが、私はそれを使いません。
それがこだわりです。

すべて手で(まつり縫いを)します。

ミシンでまつり縫いをしたものは、
一旦 糸がほつれてくると、全部ばーっと解けてきちゃうんです。

手でまつり縫いをすると、そういうことはありません。
だから私は絶対”手”です。
お直しに来ているのに、また同じことになったら嫌だなって思います。

”来た時よりも美しく”がモットーです。
仕上がりを美しくということですね。

◆…美しい仕上がりとは、どのようなものだと思いますか?

縫い方だと思います。
しわっぽいのも、つっている感じも、縫い方で変わります。

たとえば、先日手がけた紳士服は 身丈、袖幅、肩幅、着丈を全部直しました。
これも縫い方、芯の使い方で”品”が違います。

細かいところも省かないできっちりやる。
材料は絶対にケチらないです(絶対です)
これも性格でしょうね、省いちゃうと居心地が悪いんです(笑)

裏地もきちんとした品物を使います。
裏だからこれぐらいでいいしょうって済ませちゃうのは嫌ですね。
裏がきちんとして初めて 表が整います。

ちょっとした気持ちですけれど、
お客様も「あ、ここまでしてくれたの?」と喜んでくださいます。

”美しい仕上がり”を追求していくことは、機械やデジタルではできません。
そう考えると、必要とされ続ける仕事だろうと思います。

◆…今後のことをどのように考えていますか?

私ができることは、お客様に寄り添うことだと思います。
それは、お客様の声をきっちり聞くことだとも思います。
根気のいる仕事ですが、健康に気を付けながら生涯現役でありたいと思っています。

アメリカに移住することになったお客様が、
アメリカでお直しをお願いしたら、全然満足できなかったという話をしていました。
その方は去年まとめてお直しを持ってきてくれました。

安くて大量に生産する既成服店が多くある中で、
ダメになったら捨てるっていう考え方も多い時代になりました。
それもひとつだとは思いますが、面白いのは、
そのお店で買ったお洋服を徹底的に直したいとおっしゃって来店する方もいるんです(笑)

インターネットで買い物する方も増えていますが、
やはり私は洋服を触って試着して
これなら良いというお洋服を手にして欲しいなと思います。

こだわったお洋服を身につけている人は
生活の他の部分もこだわっている人が多いような気がします。

昔は着物をほどいて洗って作り直していたわけですから、
日本人はものを大切にして生きる文化があるんですよね。
この”文化”を大事にしたいですね。

価値観が同じで 引き受けてくださる方がいれば、
お店の環境をまるごと譲る気持ちもあります。
若い方々がこの仕事に少しでも興味を持ってくだされば嬉しいです。

今は、手に職をつけよと言ってくれた母に感謝しています。

(了)
インタビュアー:鶴岡 慶子
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