さとう さやか
佐藤さやか
【2】
◼️…どんな子ども時代でしたか?
小さいころは、本当に普通の女の子だったと思います。
ただ、体が弱くてしょっちゅう風邪をひいたり、熱を出したりしていたようです。
体力つけさせたいと母が思ったらしく、近所のバレエ教室に通うことになりました。
続けてるうちに、ちょっとずつ体力もついてきて、だんだん楽しくなってきたんです。
自分からやりたいって言ったわけじゃなかったけれど、
正直、面倒だなぁとか、今日は行きたくないなぁって思う日もあったけれど
気づけばずっと続けていました。
学校の勉強も部活もそこそこ頑張っていましたけど、
どちらかというと『周りに合わせていた』というか、
自分から何かを強く主張したり、反抗したりするタイプでもなかったです。
◼️…公務員時代はどんな生活でしたか?
公務員になったのも、自分の意志というよりは、
流れに任せて自然と決めていった感じです。
両親が教員なので、教員になる道も考えて教員免許も取ったのですが、
本当になりたいか?というとそんなに強い気持ちもありませんでした。
そんな中で “公務員試験があるから、受けてみれば?”と勧められて
『せっかくだから受けてみようかな』と…。
正直、そのときは“これがやりたい!”という明確な思いはなかったんです。
いざ合格して仕事をすると、
一緒に働いてる人とか、たくさんの人の中で働くのが好きだなと思いました。
ただ一方で、配属される部署ごとに仕事内容が全然違って、慣れるまでが大変だし、
椅子に座ってその場所に留まっているっていうのが辛いなと思いました。

公務員時代
モダンバレエはずっと続けていました。
平日仕事が終わってからレッスンに行ったり、発表会やコンクールに出たりしました。
『やっぱり踊ることが好きなんだな』
『体を動かしているときが一番自分らしいな』と実感していました。
椎間板ヘルニアになったのは公務員生活4年目です。
最初はちょっと腰が痛いな、ぐらいでしたが、
しばらくしたら、もう動けなくなっちゃって
病院で診てもらったら
椎間板ヘルニアと診断されました。
◼️… 公務員から転身を決めたのは何がきっかけでしたか?
椎間板ヘルニアで寝たきりになったとき
「人生一度きりだし、好きなことやって生きたい」と思ったのが大きかったです。
「私は本当にこれでいいのかな」
「自分のやりたいことって何だったんだろう…」と考えました。
踊ることや体を動かすことがとても好きで
どこかで「これを仕事にできたらいいのに」という思いがありました。
仕事は仕事、でも“好きなこと”だけは絶対に手放したくないと、心のどこかで思っていたんです。
だからいつか、体を動かすこととか、自分を表現することを、
“もっと自分の人生の中心に置いて生きていきたい”って、
小さな声で自分の心が言い続けていた気がします。
やりたいことが別にあることを自分でわかっていて、
それでも一生懸命取り繕って、その場所にいることは自分自身を壊すと思いました。
周りの人から「せっかくここまで頑張ってきたのに、もったいない」と言われましたが、
時間はどんどん過ぎていっちゃうし、今を逃したら次のタイミングってないんじゃないか?
出産後、子どもとも一緒にいたかったし、夫も反対しなかったので
(自分でしたいことに)トライしてみてもいいんじゃないかなと思って転身を決めました。
◼️…どんな形でレッスンを展開していますか?
最初は小さなグループで始めたんです。
友だち何人かに“ちょっと一緒に歩いてみない?”と声をかけて、
体育館を借りて、週に1回行うようなペースでした。
子どもが小学生になるくらいから
カルチャースクールで講師を始めて、
今は場所を借りてウォーキング教室を定期的に開催したり、
個人レッスンや、自治体・企業での出張レッスンをしています。
コロナ禍を機にオンラインでの指導も始めました。
初心者の方もいれば、もう何度も参加してくださっている方もいます。
最初お会いした時は杖をついていらした方が、今はさっそうと歩いていたり、
ウォーキングで自信がついたと笑顔で報告してくださったします。
そんな生徒さんの変化が一番嬉しいです。
レッスンでは、はじめに美しく歩くための体づくりのストレッチをして、インナーマッスルをよく動かします。
その後、どう歩くか、着地や腕の振り方、足の運び方などの練習をします。
体が硬くても、うまく歩けなくても、全く問題ないんですね。
“今日ここに来て、ちょっとでも体を動かせたならそれでOK!”です。
◼️…正しい歩き方とはどういうものでしょうか?
正しい歩き方と言われても、最初は“どこがどう正しいのか分からない”ですよね。
私もそうでした。
例えば、背筋を伸ばして歩くって言われても、
ただ胸を張ってるだけだったり、逆に肩に力が入っちゃったりします。
まずは視線を上げること。
そして、身体の中心を意識することが大事なんです。
レッスンでもよく言うのですが、
“まずは自分の身体に、一本線が通っているつもりで歩いてみて”欲しいんです。
そうすると、余計な力が抜けて、スッとした姿勢になるんですね。
無理に背伸びをしなくても、自然と胸が開いて、歩く時も身体がぶれなくなります。
“美しく歩くコツは何ですか?”って聞いてくださるんですけど、
私は『とにかく気持ちよく歩くこと』が一番だと思っています。
自分の歩き方が好きになったら、それが一番美しいし、正しいと思うんです。
◼️…モデルさんの歩き方とは違うんですね?
モデルさんのウォーキングは、服を見せる歩き方”なんですよね。
私のレッスンで教えているのは、モデルさんのウォーキングじゃなくて、
あくまで“毎日を気持ちよく歩くため”、そして“自分を美しく見せるため”の歩き方です。
◼️…「歩くこと」って(私たちにとって)何でしょうか?
一般的には、たくさん歩けば健康になる、10,000歩 歩けば健康になると言われます。
でも、間違った歩き方でたくさん歩いちゃうと、
膝や腰を痛めちゃって
歩くのに支障が出たり、歩けなくなっちゃうことがあるんです。
高齢になると転びやすくなりますし、それがきっかけで寝たきりになることがあります。
現代人は運動不足なので、ある程度の歩数を確保するのはもちろん大事ですが、
歩けば歩くほど元気になる歩き方が前提としてあると思うんです。
正しく歩くと、あまり疲れません。
むしろ歩けば歩くほど、ちゃんと血流が巡って内臓機能も活性化して、
自然と呼吸もしやすくなって、どんどん元気になっていくんです。
外から見ても“あの人元気そうだな”“颯爽としてるな”という歩き方になりますし、
女性なら“美しく歩いてるね”とか“若々しく見えるね”って言われたりもします。
正しい歩き方=元気になる歩き方なんですね。
だから歩くことを学ぶことで、健康になるし、心も前向きになります。
そんな人達が増えて、その輪が広がっていくと、
元気な社会につながると思うんです。
◼️…「歩くこと」を通してどんなことを伝えていきたいですか?
秋田など(のような地方都市)は車社会なんです。
どこに行くにも車がないと不便で、歩く機会がすごく少ないんです。
だから“歩く”ってこと自体を、あえて意識しないと全然やらない。
私もずっと車生活だったんですけど、
歩くようになってから、
“こんなに自分の体が変わるんだ”って実感しました。
私自身が20代の時に寝たきり生活をして、
それをきっかけに歩くことを学んだのは、私だけの経験ですから、
歩けることの素晴らしさ、歩けること楽しさを
もっと多くの人に伝えていけるように発信していきたいです。
歩くって、ただの移動手段じゃなくて、
自分の体や心と向き合う時間になるなって思います。
外を歩いてると、季節の変化も感じられるし、ちょっとしたことで気分が変わる。
車の中だけでは絶対に味わえないことがいっぱいあります。
秋田にいるとどうしても車に頼りがちだけど、
ほんの少しでもいいから歩く時間を作る、
そして美しく歩こうと意識するだけで、
体も心も本当に違ってきますよって、
みんなに伝えたいです。
◼️…「人生のステキ」とは何だと思いますか?
私にとっては「自分らしく、納得できる選択を積み重ねていくこと」です。
どんなに小さなことでも、「自分で選んだ」と思える瞬間は、それだけで輝いているんだと思います。
これからも、いろんな「ステキ」に出会い続けたいし、
誰かの「ステキ」を応援できる存在でありたいと思っています。
歩くって毎日みんなやってることだけど、
意外と“どう歩いてるか”って考えたことがない人が多いんですよね。
私は“歩くこと”が人生を変えるきっかけになるって思っています。
落ち込んだ時や、悩んだ時こそ、少し意識して歩いてみることで、
体が軽くなって、自然と心が晴れてくる瞬間があると思います。
レッスンに来てくださる方も、みんなそれぞれ体も違うし、ペースも違う。
大事なのは、自分の“今”を大切にして、自分の体と仲良くなること。
少しずつ変化していく自分を楽しんでもらえたら、それが一番嬉しいです。
歩くことで、自分自身と向き合う時間ができるし、
新しいアイデアが浮かんだりすることもあります。
人生にはいろいろなことがあるけれど、
歩くことを通して、
少しでも毎日が楽しく、
前向きになってもらえたらなと思っています。
これからも、“歩くことの楽しさ”や“体を大事にすること”を伝えていきながら 「ステキ」を拡散したいです。