国が育てる人材
国と社会が連携して安心を支える構造
防災は、だれか一人の専門家だけで成り立っているものではありません。
国の制度の中で育てられ、役割を与えられた人。
資格制度を通じて専門性を身につけ、地域で活動する人。
それぞれ異なる道をたどりながら、同じ「地域防災の現場」に立っています。
防災とは本来、一部の専門家だけが担うものではなく、
すべての住民が、それぞれの立場で関わる営みである――と考えています。
#防災のしくみをひもといていくシリーズでは、
国がどのように防災の専門人材を育ててきたか(育てているか)、
いつ、どのような制度が始まり、どのような役割が与えられているのかを、制度の流れとして整理していきます。
図は、国の防災人材育成について可視化したものです。
防災は、資格や肩書きだけで完結するものではありません。
制度の背景を知り、役割の違いを理解することで、
はじめて「誰が、どんな場面で、何を担っているのか」が見えてきます。
このあと、国が育てる人材について、
制度の成り立ちや実際の活動、現場で果たしている役割を深掘りしていきます。
内閣府の防災人材育成とは
内閣府(防災担当)は、大規模災害や広域災害に対応できる人材を育成するため、防災に関わる専門研修や人材制度の整備を進めてきました。
代表的な取り組みの一つが、防災スペシャリスト養成研修です。
国や地方公共団体の職員などを対象に、防災の基礎から応用、災害対応や復旧・復興に至るまで、実務に即した研修を行っています。
これらの研修は、単独で資格や肩書きを与えるものではありません。
一方で、地域防災マネージャーなど、他の専門人材制度の基盤として位置づけられており、
国が防災人材育成の「土台」を担う仕組みとなっています。
内閣府は、個々の専門性を束ね、自治体や関係機関が連携できる環境づくりを支えています。
地域防災マネージャー
地域防災マネージャーは、防災や危機管理の実務経験を持つ人材を対象に、内閣府が能力を証明する制度です。
防災スペシャリスト養成研修などを通じて知識や視点を整理し、
自治体の防災体制づくりや災害対応の調整役としての活用が想定されています。
最終的な配置や登用は自治体が判断し、地域の実情に応じて役割を担います。
気象防災アドバイザー
気象防災アドバイザー
は、気象庁が実施する研修を修了した気象の専門家の中から、国土交通大臣が委嘱する制度です。
自治体の防災業務を支援し、気象情報や防災気象情報を地域の実情に即して読み解く役割を担います。
判断の主体ではなく、判断を支える立場として、平時から災害時まで助言を行います。
※ 執筆者 鶴岡慶子は、国土交通大臣委嘱の気象防災アドバイザーの一人です。
本シリーズでは、個人の立場にとどまらず、制度全体を俯瞰する視点で取材・執筆しています。

