ささき きょうこ

佐々木 恭子

神奈川県横浜市出身。
早稲田大学第一文学部演劇専修を卒業後、テレビ番組制作会社入社。
バラエティー番組のディレクターを経て、2007年に気象予報士の資格を取 得。
民間気象会社で自治体防災向けや高速道路・国道向け、企業向けの予報など を担当。
現在は予報業務に加えて、気象予報士資格取得スクールや気象予報士向けス キルアップ講座などを主催・講師を務める。
合同会社てんコロ. 代表

日本雪氷学会、日本気象学会会員。
趣味はマラソン。雪結晶撮影。

著書:『天気でわかる四季のくらし』(新日本出版社)など、
監修:『奇跡の瞬間!空の絶景100選』(宝島社)、『NHK学ぼうBOSAI 命を守る防災の知恵』(金の星社)など、
編集協力:『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)シリー ズなどがある。 

合同会社てんコロ. 

TeamSABOTEN 

【2】

◼️…佐々木恭子という名前を聞いて、もう一人思い浮かべる人がいます (笑) 

前職(番組制作)の時は、結婚後も旧姓 箭内で仕事をしていたので、
みんなに”ヤナイちゃん”って呼ばれていました。

気象業界に入る時には佐々木で入りました。
そうすると、フジテレビのアナウンサーと同姓同名になっちゃうんですね。

最初、気象会社では 佐々木恭子っていう人が入ってくるというので、
フジテレビのアナウンサーが 気象予報士の資格を取ったんだっていうことになっちゃっていました。

話が大きく捻じ曲がっていたところに 私が登場したので、
あれ?ってなったみたいでした(笑)。

「わたし、佐々木恭子ですけど…」(笑) 

ほかに、講演依頼があった時に、
プロフィールについて、
肩書きは、気象予報士・フジテレビアナウンサーでいいですかって 言われたことがあります。

アナウンサーだと思って発注されたり、
向こう(アナウンサーの佐々木さん)も、気象予報士だと思って発注されたら嫌ですよね。

最近はあまりなくなりましたけど…ね。 

◼️…気象会社に入って最初はどうでしたか? 

気象予報士試験は、学科一般、学科専門、実技の3科目があって、
私は知識を詰め込んむ形で合格した(合格してしまった)感じでした。

予測を出すためには天気図だけじゃなくて、
当たり前なんですけど学科の知識も大切なんです。

現象は分かるけど、
果たして何の資料を見て予測を作ればいいのかわかりませんでした。

結局、家に持ち帰って、こっそり勉強をしました。
試験勉強の時よりも気象業界に入ってからの方が、勉強ノートが多いです。 

◼️…具体的にどんな予測業務をしたのですか? 

初めは、防災のために天気予報が欲しいという自治体や
ゴルフ場、神宮球場に予測を出しました。 

◼️…難しいのはどんな予測ですか? 

一番イヤで(!)一番やりがいのあるのが 電力会社に提供する気温の予測でした。

昨日使わなかった電力を今日使いましょう…とはいかないので、
必要分しか作らないんですね。
電力をどれくらい作るかを決める大事な要素の一つが気温なんです。

予測した最高気温に合う電力量を用意したのに、
特に夏は、それより気温が上がっちゃったら電力が足りないし、
それより気温が低かったら無駄が出てしまうということになります。 

◼️…冬はどうですか? 

冬の道路予測も、胃が痛くなりますね(笑) 

道路予測は、道路を安全に通行できるよう維持・管理するために用いられる情報です。
私たちが提供する予測は、
例えば降雪時は、

    • どの区間でどれくらい雪が降るのか、
    • 何時ごろに強く降るのか、
    • 積雪はあるのか、
    • 路面の状態はどうなるのか などの予測を提供します。

その予測に従って、
お客さんである道路会社では凍結防止剤を散布するのか、
除雪が必要なのかなど、対策を取るわけです。

仮に、除雪が必要な予測を私が提供すれば、
道路管理をする側では

    • 一番降りそうなこの時間帯に、
    • この路線の、
    • この地域に重点的に除雪車を回せるように
    • ここに除雪車を置いておきましょう という手配をするのです。

つまり、私が出した予測によって
ヒトやモノがめちゃくちゃ大きく動くんです。

想像して欲しいのですが、とってもお金がかかるんですね。
この予測通りに行かなかったら大損になるってことです。

予測だから外れることがあるのを前提での契約ではありますが、
ものすごいプレッシャーです。 

◼️…風も難しそうですね。 

風も難しいですね。

東京湾周辺で作業する工事会社に対して
風の予測を提供する業務もありました。

しきい値が10m/sで、
それよりも強い風が吹きそうだったら 工事を中断するということになっていて、
強まるという予想を出したのに、吹かなかった。
そうなると、工事ができたじゃないか!となる。 

予測をする私たちは、
なぜ(強風が)吹かなかったのかの原因を検証することも仕事ですが、
シナリオを振り返ってもなお
強風でしか出せないなーということももちろんあります。 

でも、シナリオとは別に、
お客様に対して、1日放ったらかしじゃなくて
「強風が吹かなそうです」と
もうちょっと早い時点で言えるタイミングがあったかもしれないので、
お客様に対するケアも大事にしていきたいです。

◼️…スクール講師を始めたのはいつごろですか。 

予測業務を始めて4年目ぐらいだったと思います。

仕事をして3年ぐらい経って会社(合同会社てんコロ.)を作ったんです。
初めは作っただけで、どうしようかなと思っていた時に
*島下尚一さん防災気象プロ株式会社)が
スクール講師を探している、場所は提供できるということで
共同でスクールを始めることになりました。 

その後に、Team SABOTENを結成して、現在にいたります。
気象予報士の資格取得の受験生向けも、
合格した後のスキルアップ講座もやっています。 

*島下尚一さん 防災気象プロ株式会社 代表取締役

◼️…今後、気象予報士も増えていくといいですね。 

映画「天気の子」や、ドラマ「おかえりモネ」を見て、
気象予報士を目指す方が増えていますね。 

もっと増えてくといいなと思います。 

◼️…予測業務もありますから、時間のやりくりは大変じゃないですか? 

大変じゃないですね(笑)

多分、昔の時間感覚が染み付いてるのでしょうね。
私の中に、時間の区切りという概念がないのかもしれません(笑) 

◼️…今後、核となるものは何でしょうか? 

やはりコンサルティング業務でしょうか。
気象予測を作って提供した上で、
コンサルティングサービスをしたいと思っています。

天気予測は、多くの会社にとって重要なはずなんです。
気象に左右されているのに、
気象庁の予報だけを見ている会社がかなりあるんですよね。 

たとえば、台風がくるときだけの利用でも、役に立つ情報が出せると思います。

大きい気象会社にはできない、
細かいサービスを提供していきたいと考えていて
それを今、まさにできる体制を整えているところです。

気象予測は気象予報士の資格がなければできないことですし、
うちの会社だからこそできるよね!という内容を充実させて、
提供していこうと思っています。 

彩雲(本人撮影)

(了)
インタビュアー:鶴岡 慶子
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