うめこ

梅子

神奈川県出身。
トウペディップアート協会認定講師。栄養士。
食品添加物(香料)研究員を経て、現在は岩手県在住。3児の母。
趣味は着物を日常着として楽しむこと。 

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【2】

◼️…作品は手で成形するのですか?

ペンチのような器具もありますが、基本的に手で作ります。

特に アクセサリーは
手で曲げられる程度の細いワイヤーを使うことが多いので
手で形を作っていきます。

ただ、そのワイヤーも 太さによって
ディップ液がうまく乗らなかったり、 形がきれいに作れなかったりします。

さらに、ディップ液に浸して乾かしただけだと、
半年ぐらいで触る割れちゃうのです。 

◼️…長持ちするように作るコツはあるのでしょうか?

私が今使っているコーティング方法が、4つぐらいあります。
その物によって強化方法を変えています。 

イヤリングぐらい小さいと、UVレジンというもので、がちっと固めます。

髪飾りとか大きいものになると、
お花の動きがあったり表情を変えられたりする方がいいので、
アメリカンフラワーの技術の強化方法を使います。

お花も葉っぱも面白いですが、
もっと面白いのは、ほうずきや蕾のような球体もつくれることです。
細かい技術ですが「かぶせづけ」といって、
立体の周りにディップ液を貼らせて作るんです。 

半開きのつぼみは、お花を作ってからすぼめていくように作っています。
ディップ液が乾いた後に 開き具合を調節するんです。
花びらの作り方に近いですね。

◼️…作品のバリエーションが豊富ですね。

アメリカンフラワーの技術が元になっているので、
花が中心ではありますが、花に添える蝶なども作ったりします。

制作に1ヶ月ぐらいは欲しいので、たくさん作るのは難しいですが
お祭りや、七五三、成人式の着物に合わせたフルオーダーも承っていて、
着物に合わせたイメージで作ることもあります。
お子様と親御さんのペアで作って欲しいというオーダーもあります。

最近は、海外から購入してくれる方も増えてきました。
最初は自分で発送していたのですが、
今は海外発送の代行をしてくれるminne(ミンネ)を利用しています。

また、パリにお子さんを連れて移住した友人がいて、
その方は、着物のリメイクをされてる方なんですが、
その方を通じて、パリの郊外で販売しています。

他には、カナダとオランダにも発送をしました。

英語はできないのですが、今、翻訳機能が使えるので助かっています。
それでなんとかやってますが、
息子と一緒に「英会話を勉強しよう」って話しています。 

◼️…お子さんが3人いらっしゃるとのこと。作家活動と家事はどんなバランスでやっているのですか?

作品を作り始めちゃうと夢中になっちゃうので、
夕飯が押しちゃったり、待たせちゃうことも多いのですが、
もう大きくなったので、ほぼ自分のペースでやっています(笑)

私の場合は、子育てが落ち着いてから作家活動を始めたので、
今 小さいお子さんがいながら作家活動されてる方はすごいなって思います。 

◼️…(子育てが)落ち着く前は、どんな感じだったのですか?

結婚して岩手県に来たんですけど、夫が10年以上単身赴任だったんです。

夫の実家は近くにあるけれど、うちの両親は遠いし、
ぽつんとこの地に残されて、完全ワンオペ*で3人の子育てをしました。

*ワンオペ=育児を一人でこなす状態のこと

夫は、子育てにまったく干渉しない人で、
言ってみれば任せてもらってるんですけど
学習発表会や、運動会はもちろん、卒業式、入学式も来ないので、
私はカメラとビデオ持って、一人背負って、一人手を引いて出かけるんです。

何より大変だったのは、救急病院に行かなきゃいけなくなった時。
誰も置いていけないので、3人を連れて病院に夜中に行くという…
凄まじい子育てをずっとしていました。

その間は、自分の時間、自分の趣味は考えたこともなかったです。
それでも子育てはやっぱり楽しかったと思います。

◼️…一番大変な時は、何時に起きていたのですか?

毎朝4時半には起きていたと思います。

一番大変だったのは、 夫が単身赴任中、3人の子育てをしながら、
パン屋さんでアルバイトもしていた時でしょうか。

今思うとよせばいいのにと思いますが、
行政がその頃、3人目の保育料無料を打ち出していたので、
もらわなきゃ損だと思っちゃったんですね。

アルバイトしようかなと思ったら、
もともと大学で栄養のことを学んでいて、食べることも好きだったので、
パン屋さんの製造のお仕事をすることにしたんです。

その頃、娘の幼稚園のお弁当を作るのに
(今でこそキャラ弁っていう名前がありますが)
キャラ弁っていう名前もない時代に、結構キャラ弁を作っていました。
しかも同じキャラクターを作らないという謎のこだわりまであって(笑)
毎日毎日 キャラ弁を作って、写真を撮っていました。

幼稚園の送迎は、舅(しゅうと 夫の父)が協力してくれました。

朝5時半に来てくれて助けてもらいました、

そんな生活を10年弱続けました。 

◼️…時間のやりくりは大変でしたね。

子どもはスポ少*に入っていたので、それぞれに送り迎えがありました。
こっちを送ったら、こっちに迎えにいくなど、分刻みのスケジュールでした。
めちゃめちゃ「おかあさん」していました。

ただ、夢中すぎて自分の時間がないなっていう不満は感じなかったんです。

*スポ少=スポーツ少年団

長男が社会人になって、今 少し寂しさを感じています。
ワチャワチャいたのが
母がいなくても勝手に食べるよみたいなのは、ありがたいですけどね。

子育てが一段落したことで、
久しぶりに自分のために時間もお金も使っているなと感じます。

◼️…身体は壊さなかったのですか?

丈夫に産んでもらったことは、本当に母に感謝しています。
疲れて寝込んでも1日で治るような感じでした。

運動をしていてアスリートとして培ってきたものも あったのでしょう。
以前は、年40日ぐらいは、長野と新潟にスキーに行っていました。
モーグルの選手として長野五輪を目指すことも考えるほどでした。
前十字靭帯損傷の大怪我をしてもなお、もう一回滑れるようにと再建手術もしました。
本当にスキーに夢中でした。

雑誌の読者モデル経験もあります

夫との出会いはスキーです。
ある時、海外にスキーに行こうという話になって、仲間と一緒にフランスに行ったんです。
そこで別のグループで来ていたのが夫でした。
フランスの雪山が出会いです(笑)

雪のない神奈川時代はよく行っていたスキーですが、
雪の降る岩手に来たら子育てに没頭しちゃって、スキーはしていないですね。

◼️…アスリートと作家活動の両面をお持ちなんですね。

大学で栄養の勉強をして、
添加物の研究員をして、
モーグルスキーに没頭して、
さらに、子育ては無添加生活を心がけて夢中で駆け抜けてきた。
キャラ弁も作りましたしね。

子育て支援センターでキャラ弁講習をした時の写真

振り返ると 全部まっすぐ進んできたのかなと思います。

自分の手から生み出される作品を作るとは思わなかったけれど、
アメリカンフラワーに一目惚れしてから
やっぱりまっすぐ進んじゃったんでしょうね。 

◼️…今後はどんな展開をしていきますか?

フランス(2022年)に行ったことで
日本の文化を世界に向けて発信している作家さんとも繋がりができました。

フランスに行くのはお金がかかったけれど
それ以上のものをもらったなと感じています。

日本人にとって当たり前のことでも、
海外目線で言えば、新しいと感じるものが
たくさんあるのだということにも気付かされました。

そういえば、地元(岩手)の人が当たり前だと思っていることが
横浜から来た私にはキラキラして見えたものがたくさんありました。

「Cou cou」に加えて打ち出した、上位ブランドの「花あかり」は、
私自身が作りたいものを突き詰めていきたいと思って立ち上げたものです。

持てる技術を駆使して、
こだわりの素材を使った作品を、 世界中の喜んでくださる方に
もっともっと届けていきたいです。 

(了)
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