たけいし みく

武石 美久

秋田県北秋田市生まれ。
秋田県立鷹巣農林高校林業科を卒業。
美容師を経て現職。
2人の子のシングルマザー。
Mrs of the Year 2024 秋田大会ブリリアント部門グランプリ。

武石紙器株式会社
〒018-3301 秋田県北秋田市綴子字美田古32-2
TEL0186-62-0241

@takeishishiki_hakoya

【2】

◼️…武石紙器株式会社はどんな会社ですか? 

箱を作っている会社です。

お菓子屋さんとか、曲げわっぱのような民芸品用の箱、
製造業の精密機械を納める箱なども作っています。

個人のお客様でハンドメイドの商品や趣味で制作した作品を入る箱を依頼される方もいます。

パッケージと言うより「箱屋」さんという言葉がしっくりくるような職人仕事です。

誰にでもできるような仕事もあるけど、
職人でしかできない仕事っていうのがあります。
例えば、精密機械用の段ボール加工は
部品が動かないように固定するので緻密さが求められます。

その緻密さ、キレイさ、自分にしかできない技術を磨いていく感じは、
やはり職人の仕事だろうなと思います。

◼️…ご自身の技術はどうやって高めていったのでしょうか?

私が入った当初は、社員もたくさんいて
隙間時間に教えてもらいながら作業をしていたのですが、
技術がついてくると、創業者の孫として
誰よりも上手にキレイに仕上げたいという思いが強くなってきました。

負けん気が強いので、
そういう気持ちがどんどんスピードや技術が高めてくれたのだと思います。

初めは覚えることがたくさんあり過ぎてびっくりしました。
何百という箱の種類や大きさ、材質など
技術の他にもたくさん覚えることがありました。

それに加えて、どうやったら上手くなるのか?
どうやったらキレイになるのか?と考えることがあり過ぎて大変でした。
初めの2〜3年は気持ちもボロボロで、
自分で「社長」と名乗れるようになったのは、ここ最近のことです。

コロナ禍で仕事が減り、今は身内だけで会社をやっていますが、
業績はコロナ前に戻ってきました。

◼️…箱ってそんなに種類があるんですね。 

例えば、段ボールは横から見ると”なみなみ”になっていますよね。
あの硬さも厚さも色々あるんです。

それが素材ごとにあるわけですから何百種類になるわけですね。
それをまず全部覚えるのが大変でした。

◼️…オーダーする側(素人)はどうやって発注すれば良いのでしょう? 

サイズが確認できれば、デザインを打ち合わせして作っていく流れです。
箱の素材も丁寧に打ち合わせていきます。

「これが入る箱を作ってください」とその商品を見せてくださる方もいます。

お客様はすでに箱のイメージがあるんですよね。
それをこちらが汲み取って形にするようにしています。

◼️…良い箱ってどういう箱でしょうか? 

一番重要なのは、見た目の美しさです。

ボロボロの汚い箱に入ってると、中身大丈夫?って思っちゃいますが、
きれいな箱を目の前にすると、開ける楽しさがありますよね。
何が入ってるんだろうってワクワクしますよね。

私たちはエンドユーザー(消費者)さんのお顔は見られないので、
箱の中に入っている商品がより価値が高まるように
エンドユーザーさんの喜ぶ顔をイメージして作っています。

もし100個作った内の1個失敗して、まいっかと出荷したとしたら、
私たちにとっては、100個に1個でも、
その1個に当たった方は絶対ショックだと思うんです。

100個の箱すべてをきっと喜んでくれるであろうお客さんのために作る。
そういう信念で作っています。

◼️…最近はSNSでの発信もしていますね。 

まだ1年しか経っていませんが、SNSで発信をするようになって、
エンドユーザーさんの顔が見えるようになりました。
箱の中身だけじゃなくて、
箱の写真も一緒に掲載してくれることが嬉しくて励みになっています。
SNSでは、作業風景の動画も載せていますが、それが好評です。
私たちにとっては当たり前の風景ですが、
結構なスピードのベルトコンベアーに、正確に箱の四隅を合わせて
きれいに置いていくのが興味深いと感じていただいているのでしょう。

個人のお客様が増えたのも嬉しいことです。
首都圏や関西圏からの発注があったのですが、
どうしてウチの箱屋なんですか?と聞いたところ

  • 自分の思った通りのデザインにしたいこと
  • 小ロットでも対応してくれること

で 選んだと教えていただきました。

SNSを始めて「箱難民(はこ難民)」が多い事に驚きました。
箱は身近にあることが当たり前すぎて、いざ必要としたときに
「丁度良い箱がない。どこで作っているか分からない」という声が多いことを
SNSで箱屋を見つけていただいたお客様に教えていただきました。

箱職人は業界として、お店や企業向けにお仕事を主にしてきましたが、
私は、もっともっと個人のお客様に向けても発信して届けていきたいと思います。

◼️…お客様の思った通りのデザインを汲み取るのは難しいことじゃないですか? 

例えばお客様の中には、
ロゴマークなど決まったものはあるので
絵柄などには あまり時間はかからないです。

一方で、
箱にどう印刷するのか、
あるいは、箔押しなのか、
そうだとすれば、金なのか黒なのか等、どんな加工にするのか。
そして、箱の形をどうするか。

打ち合わせに何週間もかかる時もあります。

今、少人数で会社をやっているため
私もなかなか現場を離れられず、
夜遅くや朝早い時間に打ち合わせの時間を設定しているところが
申し訳なく、これからの課題でもあります。

◼️…今後どんなことに力を入れていきたいですか? 

箱屋は影の薄い存在なので知らない人がたくさんいます。
SNSでの発信もそうですが、
イベントにもたくさん参加するようにして
箱屋と言う職業、職人がいることを認知してもらうよう行動して行きます。

行動することでできたご縁で「Mrs of the Year 2024秋田大会*」にも出場し、
ブリリアント部門でグランプリをいただきました。
来月(11/3)は、全国大会です。

行動することで、出会える事柄も人も変わるのを感じました。
このコンテストのテーマ「行動の美」って本当に良いことばだと思います。

*Mrs of the Year=ミセスオブザイヤー(アジア最大級のコンテスト)

今一番大事にしたいのは、想いのこもった箱を作っていくことです。

箱の役割って「思いを届けるもの」だと思うんです。
贈る側の思いが届いて、受け取った側がときめく瞬間、
そこに存在するものが箱だと思います。

そういう箱を、職人として作り続けたいです。
箱屋がこの地域からなくなってしまったら困ると言っていただくので、
続けいくことが使命だとも感じています。

一方で、承継問題はずっとついて回るものです。

  私の子どもたちはどうか?
  兄の子どもたちはどうか?
  世襲関係なく考えていくか?

この地域に箱屋を残すこと、
この職人技をいかに後世に残すか
考えていかなければいけないと思います。

それは、必ずしも箱屋が大きくなるではなく、
一人一人とのご縁を大事にしていくことだとも思っています。

(了)
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