埼玉県出身。東京在住。
日本大学芸術学部デザイン学科を卒業後、
単身ニューヨークでファインアートやイラストレーションを学び、
帰国後、雑誌や広告などのイラストレーションを数多く手がける。
2018年ロサンゼルスで個展、2019年サンディエゴで壁画制作などグローバルに活動。
近年アップル社、Adobe Systems Inc. との共作をきっかけにデジタル作品も多く手掛け、
デザインとアートの両方に力を入れている。
自身の創作活動とともに、国内外のアーティスト、企業とのコラボレーション(アップル社、Adobe Systems Inc. のほかスポーツメーカーのルコック、デサントなど)を多く手がけている。
第12回 文化庁 メディア芸術祭 アート部門 審査員推薦作品賞を受賞。
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◆…最近は主にどんな活動をしていますか?
これまではデジタルで仕上げる作品が多かったのですが、
今は、ドローイング(線画)に はまっています。
原画への憧れがずっとあって、今はそれが中心です。
1発勝負の墨絵みたいな世界を描いてみたり、
それとは真逆の ものすごい時間のかかる絵….西洋の図鑑みたいな感じの絵を描きたいと思って
それに着手したのが35歳ぐらいの時でした。
その時の気持ちに今は近い気がします。
◆…プロとしてスタートした時から変わってきたことはどんなことですか?
初めは、雑誌で、おしゃれな女の子とか、流行りのお家とかを描いていて、
ハワイやイタリアの街の地図をおしゃれに描くのを頼まれたりしました。
あの頃は、インターネットはあったけど、SNSはありませんでした。
それでも海外の仕事をたくさん手がけていたので、
あの頃SNSがあったら、すっごくフォロワーがいたかもしれませんね(笑)
だけど自分が描きたいん絵じゃないなと思うこともあって
1年半に一回ぐらいずつ個展をして、自分を探っていました。
しっくりくるものと出会うまで…。
そこから、だんだん表現したいものと仕事が一緒になってきました。
到達するのに、15年ぐらいかかりました。
たどり着いてしまうと楽しいし、そこからの広がりは早かったと思います。
長くデジタルの作品を手がけてくる中で、
牧さんに憧れてイラストレーターになりましたと言われることもあって
やり切った感覚も出始めていたところに
世の中はコロナ禍になり、紙とペンで描き始めたんです。
ドローイングがもともと好きだったので、原点回帰ですね。
◆…デジタル作品と(線画ような)アナログ作品の違う点はどんなところですか?
テクノロジー(科学技術)が発達してくると
今までできなかったことできるようになったりするので
そこに面白さがあって、長い間デジタルの作品を多く手がけてきました。
メタバース(3次元仮想空間)が広がってきたり、
NFT(デジタルアートの著作権)アートをチームでやる話もしていますが、
なかなか進まないのは、今 ドローイングに はまっているからかもしれません。
デジタル作品は、画面を通さずに見る段階になると結局は印刷物となるので、
薄っぺらな感じに見えてきてしまった…。
テクニックが薄いなと感じるようになったんです。
一方で、ドローイングは、紙と鉛筆の立体的な盛り上がりがあるんです。
そこにパワーを感じて、面白くなっちゃって
デジタルの面白さとは 全く違うところに、魅力を感じています。
◆…以前、私が観た個展は「森をゆく。 -Mori wo Yuku」だったと思います。
2002年ぐらいだからもう、20年前!
インスタレーション的発想が色濃く出た最初の頃ですね。
森に住む動物を紙粘土で作ってブランコに乗せていました。
会場の床に水たまりをイメージした青い布があって、
そこに座布団を置いて、そこに座れるようになっていました。
ちなみに、その座布団は母が作ったものでした。
空間に対して自分の絵がどうインスタレーションされるか…というチャレンジでした。
◆…題材は主に「顔」と「自然」でしたね?
あの頃は顔をたくさん描いていましたね。
どこかスタイリッシュな感じが多くの方に支持されました。
今も顔はたくさん描ますけど、多くの方がもつ私の作品イメージは花でしょうか。
なぜ花なのか?というと、ごく自然な流れでもあったんです。
雲の流れなど、自然のものを描くのが好きでした。
かほりという名前なので、それで花を描くのかもしれませんね。
作品はどんどん変わっていくし、この先もどうなるかわかりません。
ただどうなるかわからないところに、価値があると強く思っています。
何にでも言えることだと思いますが、冒険をすべきだ!と思います。
冒険と挑戦がないとパワーは湧いてこないでしょうね。
◆…作品を創るときにアイディアはどこから生まれてくるのでしょうか?
次に何を描こうかというのは常に考えているんですね。
ずっと考えている中で、あるイメージが自分の中につきまとうんです。
細かい絵を描く時もダイナミックな絵を描く時も
手が動くままにペンを走らせていて、
こんな感じに描きたいなってふわっとイメージが湧くんです。
イメージのしっぽみたいなのをつかんで、それをグイグイたぐり寄せている感じがします。
描く前から頭の中に「世界」がなんとなくあって
自分が投げたボールを拾いにいっている感覚ですね。
インプットといえるかどうか?
Pinterest(写真投稿サイト「ピンタレスト」)は、よく見てます。
例えば、虫の美しさを描きたいと思って、写真を見て描き始めるということはあります。
◆…虫の美しさ…ですか?
「自然の神」が作った柄とか、形とか、とにかくすごい!とずっと思っています。
蘭の花とそっくりな格好をしておびき寄せて狩りをするカマキリがいたり、
5ミリ未満の小さな蜘蛛に綺麗な柄が付いていて可愛いダンスをしたりする。
深海もほとんど誰も見ないのに、宇宙大いなる力や不思議を思いながら 描いている感じがします。
誰の意思でこういうものが作られたのだろう?と大いなる力を感じます。
それを描きたいなと思いながら、全く到達できないし、
むしろかチャレンジする方が虚しくなるぐらい、宇宙が創り出した素晴らしいものだと思います。
人間が創り出すアートは必要なのか?と思うぐらい、自然の美しさに圧倒されますね。
とにかく描き続けないとたどり着けないと思うし、
逆にやってればたどり着けるのかもしれないし。
ただ愚直に描き続けるしかないでしょうね。